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横浜地方裁判所 昭和44年(行ウ)2号 判決 1974年6月28日

横浜市神奈川区鳥越一一番地

原告

宮重忠市

右訴訟代理人弁護士

平井光一

宇野峰雪

同市同区栄町一丁目七番地

被告

神奈川税務署長

杉山健太郎

右訴訟代理人弁護士

真鍋薫

右指定代理人

吉川明弘

白鳥庄一

佐伯秀之

右当事者間の所得税決定等取消請求事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

一、被告が原告に対し昭和四一年九月三〇日付でなした昭和三九年分所得税更正決定および加算税賦課決定(但し東京国税局長の昭和四三年八月二日付裁決により減額された後のもの)は、事業所得金額につき、金五、四三六、一七一円を超える金額を認定してなした部分を取消す。

二、原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一、原告

1  被告が原告に対し、昭和四一年九月三〇日付でなした昭和三八年分所得税の決定のうち、事業所得金額金二、五〇一、九六四円とする部分および加算税の賦課決定を取消す。

2  被告が原告に対し、昭和四一年九月三〇日付でなした昭和三九年分所得税の更正決定のうち、事業所得金額を金九、七二五、三一三円とする部分および加算税の賦課決定につき、東京国税局長の昭和四三年八月二日付裁決により減額された後の事業所得金額金五、四六〇、一五一円および加算税の、事業所得金額金九〇〇、〇〇〇円を超える部分および加算税の部分を取消す。

3  被告が原告に対し、昭和四一年九月三〇日付でなした昭和四〇年分所得税の更正決定のうち、事業所得金額を金一〇、六五八、八三八円とする部分および加算税の賦課決定につき、東京国税局長の昭和四三年八月二日付裁決により減額された後の事業所得金額金五、三一九、七九四円および加算税の、事業所得金額金一、七〇〇、〇〇〇円を超える部分および加算税の部分を取消す。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二請求原因

一、原告は被告に対し、次のとおり確定申告した。

(1)  昭和三九年分所得税につき

事業所得金額 金九〇〇、〇〇〇円

申告納税額 金七五、四〇〇円

(2)  昭和四〇年分所得税につき

事業所得金額 金一、七〇〇、〇〇〇円

申告納税額 金二四六、八五〇円

二、被告は原告に対し、昭和四一年九月三〇日付で次のとおり、処分をした。

(1)  昭和三八年所得税につき左の内容の決定および加算税の賦課決定

事業所得金額 金二、五〇一、九六四円

不動産所得金額 金三七二、〇〇〇円

納税額 金七五四、五六〇円

無申告加算税 金六、五〇〇円

重加算税 金二〇六、七〇〇円

(2)  昭和三九年分所得税につき左の内容の更正決定および加算税の賦加決定

事業所得金額 金九、七二五、三一三円

不動産所得金額 金三七二、〇〇〇円

納税額 金四、〇二九、五〇〇円

過少申告加算税 金五、三〇〇円

重加算税 金一、一五四、一〇〇円

(3)  昭和四〇年分所得税につき左の内容の更正決定および加算税の賦課決定

事業所得金額 金一〇、六五八、八三八円

不動産所得金額 金四〇三、〇〇〇円

確定納税額 金四、五〇〇、七一〇円

重加算税 金一、二七五、九〇〇円

三、原告は被告に対し、昭和四一年一〇月三一日、前項の処分につき異議を申立てたところ、右異議申立は昭和四二年二月一日審査請求とみなされ、東京国税局長高木文雄は昭和四三年八月二日次のとおり裁決し、原告は同年一一月二日右裁決書の謄本の送達を受けた。

(1)  昭和三八年分所得税決定および加算税賦課決定につき、原告の審査請求を棄却する。

(2)  昭和三九年分所得税更正決定および加算税賦加決定につき、左のとおり更正決定および重加算税賦課決定の一部を取消し、過少申告加算税の全部を取消す。

(取消額) (裁決後の額)

事業所得金額 金四、二六五、一六二円 金五、四六〇、一五一円

納税額 金二、一〇七、八五〇円 金一、九二一、六五〇円

重税 金六〇〇、三〇〇円 金五五三、八〇〇円

(3)  昭和四〇年分所得税更正決定および加算税賦課決定につき、それぞれ左のとおりその一部を取消す。

(取消額) (裁決後の額)

事業所得金額 金五、三三九、〇四四円 金五、三一九、七九四円

納税額 金二、六六六、八一〇円 金一、八三三、九〇〇円

重加算税 金七九九、八〇〇円 金四七六、一〇〇円

四、しかし、被告のなした第二項の処分中、前項の裁決によつて維持された事業所得金額のうち、左の部分の所得はないから、この部分について被告の処分は違法であり、したがつて加算税もまた違法である。

(1)  昭和三八年分につき、金額金二、五〇一、九六四円

(2)  昭和三九年分につき、金九〇〇、〇〇〇円を超える金四、五六〇、一五一円

(3)  昭和四〇年分につき、金一、七〇〇、〇〇〇円を超える金三、六一九、七九四円

五、よつて、原告は被告の処分中裁決で取消されなかつた部分のうち、前項の部分につきそれぞれ取消を求めるため、本訴請求に及ぶ。

第三、請求原因に対する答弁

一、請求原因第一項ないし第三項は認める。

但し、第三項(2)の裁決後の納税額は一、九二一、六五〇円ではなく、一、九二一、六〇〇円である。

二、同第四項は争う。

第四、被告の主張

原告は、係争各年分の不動産所得については争わず、事業所得のみについて争われているので、以下事業所得についての課税根拠を主張する。

原告は白色申告者であるところ、キヤバレー(ヨコハマミカド)のほか、バー(白百合、白鳥、ゴルフ)の三店を経営しているものであるが、係争各年分とも完全な帳簿の記載がないばかりでなく、入出金伝票、売上伝票その他取引に関する納品書、請求書、領収書等の原始記録の完備がなされていないので、原告より提出された若干の資料をもとに、被告が調査した事実を基礎にして、原告の本件係争各年分の所得金額を推計により算定した。

被告は審査裁決を経た係争各年分の原処分についてそれぞれ検討を加え、本件訴訟については次のとおり主張する。

一、昭和四〇年分(キヤバレー「ヨコハマミカド」の分)

<省略>

<省略>

<省略>

1  売上金額 八九、一九六、二二五円

原告は、昭和四〇年分について、金銭出納を記帳していたが、正規の簿記の原則に従つたものでなく、また年間を通じて記帳していたものではなかつた。全く記帳のない月(五、六、七の各月)もありまた一部欠帳の月(一、三、四、八の各月)もあり、比較的よく記帳したと認められる月は、二、九、一〇、一一、一二の各月であるので、これと一部欠帳の各月のうちで最も欠帳の少い一月とを基礎として年間売上金額を算出した。

(売上金額の算定)

月別売上表

<省略>

〔注1〕 前売券上のうち、10月54枚、11月242枚、12月353枚はクリスマスパーテイ券の売上枚数である。

〔注2〕 1月、2月の前売券売上枚数は明らかでない。

〔注3〕 1月分の売掛の記帳は3~7日、27日~31日の計10日間で、金額は253,690円である。

<省略>

左の表から1日当り平均掛売金額を算出すると25,369(253,690円÷10)円となり、これに1月の日数31日から1月1日、2日を休店であるどして、29日(31日-2日)を乗じ735,701円を算出した。

25,369円×29=735,701円

右月別売上表よりビール一本当り売上金を算出すると九〇三円〇三銭となる。

算式で示すと次のとおりである。

(売売上金額) (前売券売上) (前売券の売上を除いた売上)

44,328,716円-1,538,200円=42,790,516円

<省略>

注1 ビールの仕入本数48,000本は、月別売上表末尾のビール仕入本数の合計である。

注2 ビール瓶の破損はほとんどないが皆無ではないので、破損率を0.2パーセントとした。

注3 前売券売上のうち、10月54枚11月242枚、12月353枚、計649枚はクリスマスパーテイ券の売上枚数である。パーテイ券は「1枚にビール1本つき」とした。

注4 パーテイ券の売上枚数のうち来店しないので不使用となつた枚数は各店により異るところであるが平均的に20%とした。

次に前述の計算により算出されたビール一本当り売上金額九〇三円〇三銭に年間ビール仕入総本数九七、二六六本中、瓶の破損率〇・二パーセントを控除した九七、〇七一本を乗じて算出される年間売上金額(前売券売上を除く)八七、六五八、〇二五円と前売券の売上金額一、五三八、二〇〇円を加算し年間総売上金額八九、一九六、二二五円を算出した。

903円03銭×(97,266本×99.8%)

=903円03銭×97.071=87,658,025円

87,658,025円+1,538,200(注1)=89,196,225円

注1 月別前売券売上表

<省略>

前売券の売上金額1,538,200円の明細は左表のとおりである。3.4.5.6.7.8.9.の各月は原告の記帳していた現金出納帳が欠帳となつており金額を推計することが困難であるため(3~9)月の各月の前売券の売上はなかつたものとして記帳のある部分1,538,200円のみを加算した。

2  仕入金額 一八、二一六、一三九円

中島屋酒店よりの昭和四〇年分中の仕入高一一、三三四、四一二円と集計表の仕入材料の年間合計金額七、六〇六、五四七円から従業員の夜食分として七三五、〇〇〇円を控除した六、八七一、五四七円を加え、さらに集計表の仕出しの年間合計金額一〇、一八〇円を加えた金額である。

11,334,412円+(7,606,547円-735,000円)+10,180円=18,216,139円

なお、従業員夜食分七三五、〇〇〇円は別途特別経費25従業員賄費として同額を認容しているものである。

4  公租公課 二、二七〇、一七九円

内訳は次のとおりである。

(イ) 料理飲食税 二、二一二、七七九円

昭和四〇年一月から一二月分までの申告税額 一、四一五、二七六円

昭和四〇年二月一五日更正にかかる額 二一三、二四八円

昭和四〇年八月三〇日更正にかかる額 五八四、二五五円

計 二、二一二、七七九円

(ロ) 自動車税 八、〇〇〇円

昭和四〇年分の年税額一六、〇〇〇円から家事関連費用として二分の一相当額八、〇〇〇円を控除した残額である。

(ハ) 会費 一四、四〇〇円

月額会費一、二〇〇円に年間月数を乗じて算出したものである。

(ニ) 事業税 三五、〇〇〇円

昭和三九年所得税確定申告の事業所得の課税標準九〇〇、〇〇〇円から事業主控除二〇〇、〇〇〇円(一年間二四〇、〇〇〇円であるが三九年三月開業のため一二分の一〇相当額)を控除した残額に税率五パーセントを乗じて算出した。

<省略>

9 接待交際費 一、七三九、四二〇円

接待交際費は現金出納帳より判明した接待売上額を基礎として年間分を算出した。

<省略>

10 保険料 五七、六八〇円

<イ> 火災保険料 二九、五〇〇円

<ロ> 自動車保険料 二八、一八〇円

支払保険料五六、三六〇円のうち家事関連費用(二分の一相当額)二八、一八〇円を控除した額

15 出演料 七、三五二、一五〇円

内訳は次のとおりである。

(イ) 佐藤宏タンゴバンド 一、五九〇、〇〇〇円

(ロ) 森野嘉夫バンド 二、三〇九、〇〇〇円

(ハ) 川島プロダクシヨン 二、八四六、八四〇円

(ニ) サミー清水プロダクシヨン 二二四、三一〇円

(ホ) クラウンオケサ姉妹 六〇、〇〇〇円

(ヘ) ダニー 一三〇、〇〇〇円

(ト) 岡田ゆり子 二四、〇〇〇円

(チ) 上田幸子 一二、〇〇〇円

(リ) 富樫リサーチ 二〇、〇〇〇円

(ヌ) 野村 一五、〇〇〇円

(ル) 岡田 一二、〇〇〇円

(ヲ) 丘ひろみ 九、〇〇〇円

(ワ) 日本著作権協会 一〇〇、〇〇〇円

17 減価償却費 一、二九四、四五七円

内訳明細は次表のとおりである。

昭和40年分減価償却費明細書

<省略>

20 雑収入 六二、六八四円

現金出納帳より判明した金額を基礎として次のとおり算出した。

<省略>

<省略>

22 雇人費 四二、二五五、六一三円

<省略>

(イ) 従業員給料については原告備付の「ミカド従業員給料明細表」の一乃至一二月までの各月を合計した八、一七〇、七一五円から原告の妻に支給した給料二五〇、〇〇〇円を控除し七、九二〇、七一五円と算定した。(次表参照)

なお、原告の妻(宮重きみゑ分)については原告は昭和四〇年分所得税確定申告にあたり、配偶者控除(一一七、五〇〇円)として控除済である。

従業員給料

<省略>

(ロ) ホステス給料は原告備付の「ミカドホステス給料支給明細表」の七乃至一二月までの各月(但し一一月分は欠帳があるので除外した。)の支給額を各月のビールの仕入本数で除し夫々の月の平均値三五三円〇〇を算定しこれに年間ビールの仕入総本数九七、二六六本を乗じて三四、三三四、八九八円と算定した。(次表参照)

ホステス給料

<省略>

(年間ビール仕入総本数)(ビール1本当り)97,266本×353円00=34,344,898円

23 地代・家賃 四、〇三八、八〇〇円

<省略>

24 利子 九〇九、九九四円

<省略>

32 従業員賄費 七三五、〇〇〇円

ホステス以外の一般従業員には夜食を供しているので経費として認容する。

なお、一食を七〇円とし一日平均三五名が稼動し一月の稼動日数を二五日として認定した。

70円×35名×25日×12月=735,000円

二、昭和三九年分(キヤバレー「ヨコハマミカド」の分)

<省略>

1  売上金額 七〇、二五六、六三七円

原告には、三九年分についても、売上帳、入金伝票等取引に関する原始記録が全くないので、被告は、四〇年分の所得金額の計算により算定したビール一本当りの売上金額九〇三円〇三銭を基礎として、年間総売上金を算定した。

(売上金額の算定)

(1) 中島屋酒店よりの39年度中のビールの仕入数量は下記のとおりである。

<省略>

(2) 中ビンスタイニーを大瓶に換算する。(単価を基本とする)

中ビン <省略> スタイニー <省略>

(1)と(2)によりビールの仕入数量は(77,104+932+121)=78,157本

(3) 瓶の破そん(0.2%)は78,157本×0.2%=156本

(4) 〔キヤバレーミカド〕は39年3月に営業を開始したので開店祝いとして200本を使用消費したと推計する。

前述の(1)の計算により算出した総仕入本数から破そん分、開店祝使用分を控除した七七、八〇一本にビール一本当りの売上金額九〇三円〇三銭を乗じて七〇、二五六、六三七円を算出した。

(78,157本-156本-200本)×903円30銭=70,256,637円

2  原価、一般経費金額 三〇、一八二、二五一円

昭和四〇年分のミカドの原価経費率を適用して算出した。

四〇年分の仕入額一八、二一六、一三九円と一般経費二〇、〇九八、二一五円(事業税三五、〇〇〇円は除外)の合計額三八、三一四、三五四円を同年の売上額八九、一九六、二二五円で除した数値四二・九六パーセントを三九年分売上七〇、二五六、六三七円に乗じて算出した。

<省略>

3  雇人費 三三、三六六、一二二円

昭和四〇年分の雇人費率を適用して算出した。

前述1の売上金額七〇、二五六、六三七円に開店祝いに使用消費したビール二〇〇本分(一八〇、六〇六円)を加算し雇人費率四七・三七パーセントを乗じて算出した。

<省略>

注1 40年分の雇人費の総計である。

注2 40年分の売上の総計である。

4  地代・家賃 二、八六五、四六〇円

<省略>

5  利子 七二六、一三二円

<省略>

6  従業員賄費 六一二、五〇〇円

昭和四〇年分と同様に算出した。

三  昭和四〇年分、同三九年分、同三八年分(バー「白百合」、バー「白鳥」、バー「ゴルフ」の分)

(一)  昭和四〇年分

<省略>

<省略>

(二)  昭和三九年分

<省略>

(三)  昭和三八年分

<省略>

(四)  原告の各年分の仕入関供は、つぎのとおりである。

1 昭和四〇年分

<省略>

2 昭和三九年分

<省略>

3 昭和三八年分

<省略>

(五)  各年分の課税の計算根拠はつぎのとおりである。

1 昭和四〇年分

神奈川税務署管内に営業を有し、継続的に「バー」を営む業者で、青色申告を行ない、かつ事業規模が類似するものについて、その差益金額に対する売上金額の比率(差益率)、売上金に対する算出所得の比率(所得率)、売上金額に対する雇人費の比率(雇人費率)を求めて、これらを基礎にして原告の右店舗の売上金額、算出所得及び雇人費を算出した。

その算出根拠はつぎのとおりである。

<省略>

A 白百合

(1) 売上金額 七、八六二、八一五円

(四)の1に述べた仕入金額二、七六二、二〇七円に差益金六四・八七%を適用し算出した。

2,762,207円÷(1-0.6487)=7,862,815円

(2) 仕入金額 二、七六二、二〇七円

(四)の1に述べた「その他」仕入金額一、〇四四、一一四円は昭和四〇年分のキヤバレー「ミカド」の総仕入金額に対する「その他」仕入金額の比率を適用して、中島屋酒店よりの仕入金額一、七一八、〇九三円から算出した。

(40年ミカドの「その他」仕入金額) (40年ミカドの総仕入金額)

6,881,727円円÷18,216,139円=0.3777-------- 比率

1,718,093円÷(1-0.3777)=2,762,207円------- 総仕入金額

(中島屋酒店よりの仕入金額)

2,762,207円-1,718,093円=1,044,114円------- 「その他」の仕入金額

(3) 算出所得額 四、一七二、〇〇九円

(1)の売上金額七、八六二、八一五円に所得率五三・〇六%を乗じて算出した。

7,862,815円×53.06%=4,172,009円

(4) 雇人費 二、四三七、四七二円

(1)の売上金額七、八六二、八一五円に雇人費率三一・〇〇%を乗じて算出した。

7,862,815円×31.00%=2,437,472円

(6) 減価償却費 一八、六二九円

<省略>

白鳥と共有のため償却費は1/2とする。

B 白鳥

白百合と同様の方法で算出した。

(1) 売上金額 一一、五四五、三四八円

(四)の1に述べた仕入金額四、〇五五、八八一円に差益率四六・八七%を適用し、算出した。

(2) 仕入金額 四、〇五五、八八一円

(四)の1に述べた「その他」仕入金額一、五三一、九〇六円は昭和四〇年分のキヤバレー「ミカド」の比率を適用して中島屋酒店よりの仕入金額二、五二三、九七五円から算出した。

(3) 算出所得額 六、一二五、九六一円

(1)の売上金額一一、五四五、三四八円に所得率五三・〇六%を乗じて算出した。

(4) 雇人費 三、五七三、〇五七円

(1)の売上金額一一、五四五、三四八円に雇人費率三一・〇〇%を乗じて算出した。

(6) 減価償却費 一八、六九二円

前述の白百合と同様である。

C ゴルフ

白百合と同様の方法で算出した。

(1) 売上金額 一、九五一、五一一円

(四)の1に述べた仕入金額六八五、五六六円に差益率六四・八七%を適用し算出した。

(2) 仕入金額 六八五、五六六円

(四)の1に述べた「その他」仕入金額二五八、九三八円は昭和四〇年分のキヤバレー「ミカド」の比率を適用して中島屋酒店よりの仕入金額は四二六、六二八円から算出した。

(3) 算出所得額 一、〇三五、四七一円

(1)の売上金額一、九五一、五一一円に所得率五三・〇六%を乗じて算出した。

(4) 雇人費 六〇四、九六八円

(1) の売上金額一、九五一、五一一円に雇人費三一・〇〇%を乗じて算出した。

(5) 地代・家賃 三三六、〇〇〇円

鈴木商会への家屋賃貸料月二八、〇〇〇円の一年間の支払額である。

(6) 減価償却費 一九、〇一〇円

<省略>

1 昭和三九年分

<省略>

A 白百合

(1) 売上金額 九、五四七、一六六円

(四)の2に述べた仕入金額三、七五六、八一〇円に差益率六〇・六五%を適用し算出した。

(2) 仕入金額 三、七五六、八一〇円

(四)の2に述べた「その他」仕入金額一、四一八、九四七円は昭和四〇年分と同様「ミカド」の比率を適用して中島屋酒店よりの仕入金額二、三三七、八六三円から算出した。

(3) 算出所得額 四、七六三、〇八一円

(1)の売上金額九、五四七、一六六円に所得率四九・八九%を乗じて算出した。

(4) 雇人費 二、四九三、七一九円

(1)の売上金額九、五四七、一六六円に雇人費率二六・一二%を乗じて算出した。

(5) 原価償却費 一八、六九二円

昭和四〇年分の白百合と同様の方法で算出した。

B 白鳥

(1) 売上金額 九、二九一、八四二円

(四)の2に述べた仕入金額三、六五六、三四〇円に差益率六〇・六五%を適用し、算出した。

(2) 仕入金額 三、六五六、三四〇円

(四)の2に述べた「その他」仕入金額一、三八〇、九九九円は昭和四〇年分と同様「ミカド」の比率を適用して、中島屋酒店よりの仕入金額二、二七五、三四一円から算出した。

(3) 算出所得額 四、六三五、六九九円

(1)の売上金額九、二九一、八四二円に所得率四九・八九%を乗じて算出した。

(4) 雇人費 二、四二七、〇二九円

(1)の売上金額九、二九一、八四二円に雇人費率二六・一二%を乗じて算出した。

(5) 減価償却費 一八、六二九円

昭和四〇年分の白百合と同様の方法で算出した。

C ゴルフ

(1) 売上金額 一、四三九、八〇九円

(四)の2に述べた仕入金額五六六、五六五円に差益率六〇・六五%を適用し算出した。

(2) 仕入金額 五六六、五六五円

(四)の2に述べた「その他」仕入金額二一四、一六一円は昭和四〇年分と同様「ミカド」の比率を適用して中島屋酒店よりの仕入金額三五二、四〇四円から算出した。

(3) 算出所得額 七一八、三二〇円

(1)の売上金額一、四三九、八〇九円に所得率四九・八九%を乗じて算出した。

(4) 雇人費 三七六、〇七八円

(1)の売上金額一、四三九、八〇九円に雇人費率二六・一二%を乗じて算出した。

(5) 地代・家賃 一三九、二〇〇円

昭和四〇年分と同様鈴木商会への家賃の賃貸料である。

3 昭和三八年分

昭和四〇年分と同様の方法で算出し、その根拠はつぎのとおりである。

<省略>

A 白百合

(1) 売上金額 一〇、六二九、一三二円

(四)の3に述べた仕入金額四、二一二、三二九円に差益率六〇・三七%を適用し、算出した。

(2) 仕入金額 四、二一二、三二九円

(四)の3に述べた「その他」仕入金額一、五九二、二六〇円は昭和四〇年分と同様「ミカド」の比率を適用して中島屋酒店および木下商店よりの仕入合計金額二、六二〇、〇六九円から算出した。

(3) 算出所得額 五、一五五、一三三円

(1)の売上金額一〇、六二九、一四二円に所得率四八・五〇%を乗じて算出した。

(4) 雇人費 二、八八四、七四九円

(1)の売上金額一〇、六二九、一四二円に雇人費率二七・一四%を乗じて算出した。

(6) 減価償却費 一八、六九二円

昭和四〇年分の白百合と同様の方法で算出した。

B 白鳥

(1) 売上金額 六、一六一、六七八円

(四)の3に述べた仕入金額二、四四一、八七三円に差益率六〇・三七%を適用し、算出した。

(2) 仕入金額 二、四四一、八七三円

(四)の3に述べた「その他」仕入金額九二三、〇二八円は昭和四〇年分と同様「ミカド」の比率を適用して中島屋酒店よりの仕入額一、五一八、八四五円から算出した。

(3) 算出所得額 二、九八八、四一三円

(1)の売上金額六、一六一、六七八円に所得率四八・五八%を乗じて算出した。

(4) 雇人費 一、六七二、二七九円

(1)の売上金額六、一六一、六七八円に雇人費率二七・一四%を乗じて算出した。

(6) 減価償却費 一八、六九二円

昭和四〇年分の白百合と同様の方法で算出した。

C ゴルフ

(1) 売上金額 九、五六九、四〇四円

(四)の3に述べた仕入金額三、七九二、三五五円に差益率六〇・三七%を適用し算出した。

(2) 仕入金額 三、七九二、三五五円

(四)の3に述べた「その他」仕入金額一、四三三、五一〇円は昭和四〇年分と同様「ミカド」の比率を適用して中島屋酒店よりの仕入額二、三五八、八四五円から算出した。

(3) 算出所得額 四、六四一、一六〇円

(1)の売上金額九、五六九、四〇四円に所得率四八・五〇%を乗じて算出した。

(4) 雇人費 二、五九七、一三六円

(1)の売上金額九、五六九、四〇四円に雇人費率二七・一四%を乗じて算出した。

(5) 地代・家賃 五五六、八〇〇円

昭和四〇年分と同様、賃貸料月四六、四〇〇円の一年間の支払額である。

四、原告の各年分別所得金額は、キヤバレー「ミカド」、バー「白百合」、バー「白鳥」、バー「ゴルフ」を合計するとつぎのとおりである。

<省略>

五、原告の所得を推計したことの適法性について

原告は、キヤバレーミカドのほかバー白百合、白鳥、ゴルフの三店を経営しているのであるが、被告の調査に際しては帳簿書類を隠とくするなどして誠実な協力、応答が得られなかつた。しかし、数回に及ぶ要求に応じて調査に着手後約一か月経過してからようやく二回に亘つて売上ノート、現金出納ノート、来客集計表、伝票、領収証、試算表的なメモが呈示されたが、正規の簿記の原則に従つて記帳されたものではなく、ミカドの昭和四〇年四月二四日から同年七月末までの売上は全く記帳されておらず、記帳のあつた月でも欠帳のある月もあり、かつ入出金伝票、売上伝票、その他取引に関する納品書、領収証等の原始記録が完備されていなかつた。また、ミカドの昭和三九年およびバー三店の帳簿等は、係争各年とも若干のメモがある程度で、売上、仕入、経費等を記載した帳簿、原始記録等は保存されておらず呈示を受けることができなかつたのである。

したがつて、被告は原告が呈示した右関係書類のみによつては係争各年分の実額による収支計算をすることは不可能であり、かつ、その信ぴよう性について確たる申立ても得られなかつたので、原告から呈示された資料をもとに被告は原告の取引銀行、仕入先等を調査し収集した資料を基礎に本件係争年分の所得を所得税法第一五六条(旧所得税法第四五条三項)の規定により、前記の方法をもつて所得金額をそれぞれ推計により算出したものである。また、本件において推計課税が許されることは、原告自ら帳簿が完備していないことを認めてその主張する所得金額を推計により計算していることによつても明らかであり原告の所得を推計したことに何ら違法はない。

六、推計の合理性について

(一)  キヤバレーミカドの売上金額をビールの仕入本数から推計したことについて

1 被告は、原告呈示の帳簿により収支計算をすることは前述のとおり不可能であつたので、原告の仕入先である中島屋酒店について昭和三八年ないし同四〇年の酒類の仕入状況を調査したところ、店舗別に仕入本数、仕入金額等を確実に把握することができた。

ところで、キヤバレーのようにビールの売上を主体とする飲食業にあつては、所得計算の基礎である仕入のうち酒類の仕入状況が完全に把握できる場合には仕入と売上は相関関係にあるので、推計方法としてはビール一本当りの売上金額を算出して年間売上金額を推計することが季節的な売上の変動に左右されることなく売上の実額に近似する蓋然性も高く最も合理性があると判断されたので、右方法によつて売上金額を推計したものである。

2 ビール一本の売上に附随する総収入金額(ビール一本当り売上金額)を九〇三円〇三銭と計算したことについて

原告から呈示された関係帳簿の記帳、保存状況はすでに述べたとおりであつて帳簿により売上金額を算定することは不可能であり、かつ、酒類以外のツマミその他の仕入、売上実態は調査によつても完全に把握することができなかつたが故に売上金額を仕入から推計する方法としては、仕入の完全に把握されている酒類のうち最も割合の高い(九一・六%)ビールを基準として算定したものである。

そこで、ビール一本当りの売上金額は原告から呈示された帳簿について調査したところにより比較的よく記帳されている昭和四〇年二、九、一〇、一一、一二月と一部欠帳のある各月のうちでも最も欠帳の少ない一月の合計売上金額と当該期間に対応するビールの仕入本数を基礎として九〇三円〇三銭と算定したものである。

したがつて、被告が総売上金額の推計方法としてビール一本当りの売上金額を採用したことは合理性を有するものというべきであるから何ら違法不当は存しない。

(二)  バーの所得を酒類の仕入金額と同業者の差益率、所得率、雇人費率を採用して推計したことについて

被告は、バー白百合、白鳥、ゴルフの所得算出において、右三店の営業に関する原始記録、帳簿書類が全く保存されていなかつたので、仕入先の調査により把握できた酒類の仕入金額と同業者を選定し同業者の売上金額に対する差益金額の比率(差益率)、売上金額に対する算出所得の比率(所得率)、売上金額に対する雇人費の比率(雇人費率)を算出し、その各比率を採用して原告が経営するバー三店の所得金額を推計したものである。

右各比率を求めるための同業者の選定に際しては、原告の営業所との地理的接近性および営業規模の類似性に極力留意したことは勿論であるが、さらに重要な要素としては同業者の売上金額、仕入金額、経費額が信頼すべき確定額でなければならないということである。しかし、バー等の業種においては正確な収支計算がなされているものは比較的少なく、したがつて、この点から選択の対象は大巾に縮少される結果となつた。特に最後の点を重要なものとみて被告署管内において昭和三八年分ないし同四〇年分の所得税青色申告者のうち、バーを専業とする事業継続者で右各年の当該業種目の仕入金額が年間五〇〇万円以下の事業者全部を対象として選択したのであるが、右条件に適合するものは各年とも三業者の他になかつたのである。

したがつて、被告がバーの所得推計の方法として係争各年とも同業三業者の単純比率による差益率、所得率、雇人費率を採用して所得の推計基礎としたことはやむを得なかつたものであり何ら違法不当はないというべきである。

七、加算税賦課決定処分の適法性について

原告は、被告の調査に際して営業に関する帳簿書類を隠べいし、かつ、質問に対して誠実な協力、応答がなされなかつたこと、帳簿書類は調査の約一か月後になつてキヤバレーミカドに関する昭和四〇年分が呈示されたが、正規の簿記の原則に従つて記帳されておらず、伝票、納品書、領収証等の原始記録も完備していない一部のものであつたこと、所得税申告にあたつて昭和四〇年分の所得からはバーゴルフの所得を除外し、昭和三九年分の所得からはバーの所得をすべて除外して申告書を提出しているうえバー白鳥の所得は後藤康子名義で申告していること、昭和三八年分の所得は無申告であるうえ、バー白百合の所得は後藤康子名義で申告していること、また、不動産賃貸による所得は昭和三八年以前から継続して発生しているにも拘わらず、係争各半年分とも全く申告していなかつたこと、さらに、申告書を提出した昭和四〇年分同三九年分の営業に関する所得金額はいずれも帳簿によらない何ら根拠のない額であることは、正に原告の所得の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を仮装または隠ぺいし、その仮装または隠ぺいしたところに基づき納税申告書を提出し、又は提出しなかつたことに当るので、国税通則法第六八条の規定により重加算税を賦課決定したことは適法であり何ら違法とされる理由はない。

第五被告の主張に対する原告の反論

一、原告の昭和四〇年の横浜ミカドに関する所得について

(一)  原告は、ほぼ一年を通じて金銭出納帳を記帳していたほか、九月一日から一二月三一日の間については来客集計表がある。金銭出納帳の記載は完全ではないが、記載されている内容は十分信用するに足る。これらの書類と、信頼できる他の資料により推計した所得は、以下に述べるとおりである。

(二)  (売上金額)

(1) 売上金額に関して右金銭出納帳と来店集計表に記載ある部分を月別に集計すると左のとおりである。

なお、金銭出納帳に記載のないのは、四月に二二日間と、五、六、七月三か月である一月が二九日であるのは、二日間休みがあり、八月が三〇日であるのも一日休みがあつたからである。

(2) 現金売上について記載のない四月の二二日間の収入は、記載のある現金売上一、九一五、一七〇円を八日で除して一日当りの平均売上高を算出し(二三九、三九六円-円以下四捨五入)、これに二二日を乗じて算出すると、五、二六六、七一二円となる。これに一、九一五、一七〇円を加えた七、一八一、八八二円が四月の現金売上高である。

五、六、七月については、四月の一日当りの平均売上高と八月の一日当りの平均売上高(一七八、五六六円)と加え、これを二で除した二〇八、九八二円を一日当りの平均売上高として、各月の現金売上高を算出すると次のとおりである。

五月 六、四七八、四四二円

六月 六、二六九、四六〇円

七月 六、四七八、四四二円

<省略>

これによつて算出した一年間の現金売上高は、七二、八五二、五三一円である。

(3) 掛売上については、来客集計表に記載のある九月から一二月までの合計額四、三〇八、九三〇円を、同期間中の現金売上額二八、一〇二、一九五円で除し、これに一月から八月までの現金売上額四四、七五〇、三三六円を乗じて、記載のない一月から八月までの分を算出すると六、八六一、六八一円である。これに四、三〇八、九八〇円を加えた一一、一七〇、六六一円が年間の掛売上である。

(4) 前売券売上は、年間を通じてあるものではなく、金銭出納帳等に記載された合計一、四二六、五〇〇円である。

(5) 接待売上については、掛売上と同じ方法によつて算出すると一月から八月までは九三六、八四九円であり、年間一、五二五、一六九円である。

(6) よつて、年間の売上総額は、現金売上、掛売上、前売券売上、および接待売上の合計八六、九七四、八六一円である。

(三)  (仕入金額)

中島屋酒店よりの仕入高が一一、三五三、八八四円であるほかは、被告の計算を認め、合計一八、二三五、六一一円である。

(四)  (公租公課)

公租公課中、自動車税は後に述べるように、家事関連費用はなく、一六、〇〇〇円であり、したがつて公租公課の総額は、二、二七八、一七九円である。

(五)  (燃料費)

原告は、自動車を専ら営業のために使用しており、家事関連費用と目されるべきものではない。

燃料費は三二五、一四四円である。

(六)  (接待交際費)

原告の接待交際費は二つに分かれる。一つは、横浜ミカドの店内における接待であり、他は店外における接待交際費である。被告は、このうち店外における接待交際費を全く認めていないのであつて、不当である。

接待交際費中、店内の分は接待売上と同額であり、一、五二五、一六九円である。

店外における接待交際費は、三七八、四五五円である。

したがつて、接待交際費の総額は一、九〇三、六二四円である。

(七)  (保険料)

自動車保険料は、前述のように五六、三六〇円であり、保険料合計八五、八六〇円である。

(八)  (出演料)

サミー清水 三〇四、三一〇円

ダニー 二一五、〇〇〇円

岡田ゆう子 三六、〇〇〇円

上総幸子 五七、〇〇〇円

野村 五六、〇〇〇円

岡田久江 五六、〇〇〇円

(2) 右のほか、次の出演料支払いがある。

沢田 一七、〇〇〇円

ローヤル 一二、〇〇〇円

高橋美好 九、〇〇〇円

倉田 七、〇〇〇円

鈴鹿 一二、〇〇〇円

バンド 六、〇〇〇円

苑少広 四、〇〇〇円

(3) したがつて、出演料の総額は七、七三〇、一五〇円である。

(九)  (減価償却費)

(1) 被告の主張中、車輛自動車について、前述したとおり、一七一、一八六円である。

ピアノ取得価格は六四〇、〇〇〇円で、償却費九五、六一六円である。

造作工事費は、取得価格二、〇〇〇、〇〇〇円で償却費二二五、〇〇〇円である。

(2) その他、応接セツト、机、ロツカーの取得価格二一四、〇〇〇円があり、この耐用年数六年で償却費三三、六三一円である。

(3) したがつて、減価償却費の総額は一、六二三、〇二四円である。

(一〇)  (雑収入)

受取利息はないので、雑収入は二二、六八四円である。

(一一)  (雇人費)

被告の主張するホステス給料明細書の七、八、九、一〇、一二月の支払総額合計一五、七四六、六〇〇円を同期間の売上総額三九、三三七、四七八円(七月八月については、前述の売上金額算出方法にしたがい、七月の掛売上九九三、三五六円、接待売上一三五、六二六円、八月掛売上八二一、三九九円、接待売上一一二、一四五円とした。)で除し、これに右期間を除く売上総額四七、六三七、三八三円を乗じた一九、〇六九、〇一一円が一乃至六月、および一一月の合計である。

これに、前記一五、七四七、六〇〇円を加えた

三四、八一五、六一一円が年間ホステス給与支給額である。

したがつて、雇人費の合計は四二、七三六、三二六円である。

(一二)  (所得)

以上の推計により算定した原告の所得は次のとおりである。

<省略>

<省略>

二、原告の昭和三九年横浜ミカドに関する所得について

(一)  原告は、金銭出納帳を記帳していた。金銭出納帳の記載は完全ではないが、記載されている内容は十分信用するに足るものである。

したがつて、可納な限り金銭出納帳を基にして推計した所得は、以下に述べる通りである。

(二)  (売上金額)

(1) 現金出納帳に記載のある現金売上、売掛入金、前売券売上を月別に集計し、各月の現金売上の一日当り平均売上高を算出すると次の通りである。

なお、九月が二九日であるのは一日休店したためである。

<省略>

(2) 現金売上の未記帳日数は八月に二〇日間、九月に二日間、一〇月一か月間だけである。この記帳のない部分のうち、八月および九月については、その月の一日の平均売上高に未記帳の日数を乗じ、これに記帳のある売上高を加えて算出し、一〇月については、九月および一一月の一日平均売上高を加えて、これを二で除した二一一、一二円円を一日の平均売上高として算出すると各月の売上高は次のとおりである。

八月 五、〇八九、三七〇円

九月 六、四四六、一九七円

一〇月 六、五四四、七二〇円

これによつて算出された年間の現金売上高は、六一、五八七、二七七円である。

(3) 掛売入金についても、一部欠帳があるが、八月の未記帳日数二〇日分は、七月の一日当り平均掛売入金一五、〇三二円と九月の一日当り平均掛売入金一三、六一四円を加えて二で除した一四、三一九円に二〇日を乗じた二八六、三八〇円であり、これに記帳分五五、四五〇円を加えた三四一、八三〇円が八月の掛売入金である。

九月については、一日当り平均掛売入金一三、六一四円に二日を乗じた二七、二二八円に三六七、五七〇円を加えた三九四、八五八円である。

一〇月については、九月と一一月の一日当り平均掛売入金を加えた一五、八五六円に三一日を乗じた四九一、五三六円

これによつて算出された年間の掛売入金は四、二一九、二八七円である。

これは、掛売入金であつて、掛売上そのものではないが、昭和三九年は横浜ミカドの開店の年で、掛売上そのものが少なかつたことを考え、右金額に昭和四〇年一月の掛売入金二一一、六〇〇円を加えた四、四三〇、八八九円を掛売上とするのが相当である。

(4) 前売券売上は一一月、一二月のみであり、合計四二〇、三〇〇円である。

(5) 接待売上は、昭和四〇年の一年間分一、五二五、一六九円を一二か月で除し、開店一〇か月を乗じた一、二七〇、九七四円を年間の接待売上とするのが相当である。

(6) 以上を合計した年間の総売上は六七、七〇九、四三八円である。

(三)  (仕入金額)

中島屋酒店よりの仕入高は八、九一七、二二三円である。昭和四〇年の仕入総額一八、二三五、六一一円を同年の中島屋酒店からの仕入額一一、三五三、八八四円で除し、これに前記八、九一七、二二三円を乗じた一四、三二二、〇六〇円である。

(四)(一般経費)

一般経費は、昭和四〇年の一般経費合計二一、一六七、七三八円(事業税三五、〇〇〇円は除外)を同年の売上額八六、九七四、八六一円で除し、これに昭和三九年の売上額六七、七〇九、四三八円を乗じた一六、四七八、九六五円である。

(五)  (雇人費)

雇人費は、昭和四〇年の雇人費四二、七三六、三二六円を同年の売上額八六、九七四、八六一円で除し、これに昭和三九年の売上額に開店披露(三月と八月の二回行い、それぞれビール四〇〇本づつ使用している。)の飲食費用七〇〇、〇〇〇円を加えた六八、四〇九、四三八円を乗じた三三、六一三、九四三円である。

(六)  (所得金額)

以上の推計により算出した原告の所得は次のとおりである。

<省略>

<省略>

三、被告主張のゴルフに関する所得について

バーゴルフは、訴外山下兵意が経営していたものであつて、原告が経営していたものではない。

したがつて、その所得は原告に帰属するものではない。

昭和三七年項、原告は山下からバー経営について相談を受け、訴外角和政夫の店舗を紹介したところ、角和から、原告に対してならば賃貸してもよいといわれたので、原告名義でその店舗を賃借した。

しかし、その店舗で営業したのは、山下であつて原告ではない。

右店舗での山下の営業は振わず、昭和三八年暮、山下は右店舗を閉鎖し、バーゴルフを廃業した。

したがつて、バーゴルフについて昭和三九年、同四〇年に所得があつたことはないはずであり、被告の主張は全く失当である。

四、バー白百合、バー白鳥に関する所得について

(一)  白百合、白鳥の経営の経緯

原告は、国鉄東神奈川駅東口で大衆食堂を経営していたところ、昭和三二年火災に会つた。その後、その土地所有者であつた横浜市から共同ビル建設の話があつた。そこで被災者一二名は神奈川商事株式会社を設立し、神奈川商事と日本住宅公団で五階建の共同ビルを建設することになつた。

右の共同ビル一階、二階に合計一二の店舗をつくり、被災者が各一戸を神奈川から買受けることになつていた。

原告は、神奈川商事の代表取締役であり、共同ビルの店舗一戸を買受けることになつていたが、その後被災者の一名が買受けないことになつたのでその分を一旦原告が買受けることにしていたが、訴外後藤モトから買受けたい旨の申入れがあつたので、一つを後藤に譲ることにした。

右店舗の代金は、建物が完成した昭和三四年から七年間で割賦支払することになつており、それまでは神奈川商事が所有権を留保することになつていた。

原告が取得した店舗は一階五号室(約一三・八坪)と二階一二号室(約一六・八坪)であつたが、一階五号室は後藤に譲渡し、後藤が買受けることになつたものである。

原告は、二階一二号室でバー白百合を開業しようと考え、その資金として一五〇万円を後藤から借りて造作した。

ところで、原告は白百合を後藤の娘の康子を責任者として開業しようとしたが、話し合いの結果、経営は後藤康子が一切その責任で行うこととし、康子は原告に対し、白百合の店舗の割賦代金をその支払時期に支払うことに合意ができた。

後藤康子は昭和三四年一二月頃白百合を開店し、その後、一階五号室に白鳥を開業したのである。

昭和三八年夏頃、原告は後藤康子から経営がうまくいかないので手ばなしたいといわれたが、店舗の代金支払が四〇年七月に終るのでそれまで頑張るよう説得し、一層協力することにした。しかし、康子は健康を害してきたように思われたので、昭和三九年三月頃、原告がミカドを開業したのを機会に、原告が白百合、白鳥の経営を一切引受けることにし、康子に対しては従来どおり仕事をしてもらい給与を支払うことにした。

ところが、康子は結核に冒されており、仕事が無理になり、また、白百合の経営が難しくなつてきた上、原告は、ミカドの従業員の横領事件が発生してその経営も重大な困難に逢着していたので、昭和三九年一〇月六日白百合を廃業した。

白鳥は康子にまかせて経営していたが、康子は昭和四〇年春頃入院することになつたので、その後は姉の後藤和子が責任者となつていた。

また、白百合は昭和四〇年六月九日営業を開始した。

昭和四〇年一二月、店舗の代金を完済し、神奈川商事から各買受人に区分所有の登記ができた際に、原告は白鳥の経営から手を引き、また白百合は昭和四一年九月火災に会い廃業することになつた。

(二)  原告が、白百合、白鳥を経営していた時期

以上の経緯から明らかなように、原告が白百合を経営していたのは、昭和三九年三月頃から、昭和三九年一〇月六日までと、昭和四〇年六月九日から昭和四一年九月までであり、白鳥は昭和三九年三月頃から昭和四〇年一二月頃までである。

しかし、経営引継の日時は明確にすることはできないので、原告は、昭和三九年、四〇年の所得に関しては、原告の所得と認めて、被告の主張に反論するが、昭和三八年の所得については、後藤康子の所得であつて、原告に帰属するものではない。

五、昭和三九年の白百合に関する所得について、

昭和三九年の白百合の営業期間は前述のとおり、一月から一〇月五日までである。

(一)  仕入金額

中島屋からの仕入金額は二、二三九、五三三円である。

酒類以外の仕入について、被告はミカドの総仕入金額に対する比率を適用しているが、ミカドでは、店内に寿司店をおき、さらにコツクがいてオードブル等を作るが、白百合では、かかる人的、物的設備はないから、ミカドの比率をそのまま適用するのは全くの誤りである。

白百合でのその他の仕入は、果物、野菜、せんべい、新香等であり、仕入金額は、総仕入額の一割にみたない。ここで、一割として計算すると、二四八、八三七円である。

したがつて、総仕入額は二、四八八、三七〇円である。

(二)  売上金額

被告はA、B、Cなる同業者の差益率と所得率とによつて推計しているが、前述した共同ビルには、白百合、白鳥の外にバーが四店舗あり、その規模もほぼ同じであるからこれらの店舗と比較するのが相当である。

これらを参考にし、白百合、白鳥の実際を考えると、売上金額中に占める仕入金額の割合は四六%である。

したがつて、売上金額は、五、四〇九、五〇〇円である。

(三)  一般経費

売上金額に対する売上経費の割合も、同一建物内の他の店舗および白百合の実績を考えると、一二%である。

したがつて、六四九、一四〇円である。

(四)  雇人費

雇人費は売上総額の三五%以下を下ることはなく、三五%として、一、八九三、三二五円である。

(五)  減価償却費 一八、六九二円

(六)  所得

<省略>

六、昭和四〇年の白百合に関する所得について

昭和四〇年の白百合の営業期間は六月九日から年末までである。

(一)  仕入金額

中島屋からの仕入金額は一、七八四、八〇四円である。

酒類以外の仕入については、昭和三九年と同様に総仕入額の一割であり、一九八、三一一円である。

したがつて、仕入総額は一、九八三、一一五円である。

(二)  売上金額

昭和三九年と同様、売上金額中に占める仕入金額の割合は四六%であり、売上金額は四、三一一、一一九円である。

(三)  一般経費

昭和三九年と同様、売上金額の一二%であり、五一七、三三四円である。

(四)  雇人費

昭和三九年と同様、売上金額の三六%であり、一、五〇八、八九一円である。

(五)  減価償却費

昭和三九年と同様、一八、六九二円である。

(六)  所得金額

<省略>

七、昭和三九年の白鳥に関する所得について

(一)  仕入金額

中島屋からの仕入は二、二八二、四二〇円である。

酒類以外の仕入は、昭和三九年の白百合に関して述べたとおり、仕入金額の一割程度であり、二五三、六〇二円である。

したがつて、仕入総額は二、五三六、〇二二円である。

(二)  売上金額

昭和三九年の白百合に関してと同様であり、売上金額に占める仕入金額の割合は四六%で、売上金額は五、五一〇、九一七円である。

(三)  一般経費

昭和三九年の白百合に準じ、売上金額の一二%六六一、三一〇円である。

(四)  雇人費

昭和三九年の白百合に準じ、売上金額の三五%一、九二八、八二〇円である。

(五)  地代・家賃

白鳥の店舗は、後藤モトが買受けることになつていたもので、原告は白鳥の経営を引受けるについて、右店舗の代金の割賦金を支払うことになつた。右割賦金は一か月に引直すと約一七、〇〇〇円であつた。

したがつて、昭和三九年の地代・家賃二〇四、〇〇〇円である。

(六)  所得金額

<省略>

八、昭和四〇年の白鳥に関する所得について

(一)  仕入金額

中島屋からの仕入は、二、五五八、二一三円である。

酒類以外の仕入は、前年と同様、仕入金額の一割であり、二八四、二四五円である。

したがつて、仕入金額は二、八四二、四五八円である。

(二)  売上金額、一般経費、雇人費、地代家賃および所得金額について、前年と同様に計算すると次のとおりである。

<省略>

九、原告の各年別の所得金額は次のとおりである。

<省略>

一〇、「白百合」「白鳥」の、昭和三八年分の所得は、原告に帰属するものでないことは、既に述べたとおりであるが、仮にこれらが原告に帰属するものとしても、被告の主張する金額にはならない。

1  白百合の昭和三八年の所得は次のとおりである。

(一) 仕入金額

昭和三八年一〇月一五日まで合資会社木下商店から仕入れた酒類は金一、六六八、〇五四円で、また同月一六日以降中島屋から仕入れた酒類は金九七九、八三七円であり、合計金二、六四七、八九一円である。

酒類以外の仕入金額についてば被告は、ミカドの総仕入金額に対する比率を適用して算出しているが、ミカドには店内に寿司店をおき、またコツクを雇い、オードブルその他を調理するが、白百合にはかかる人的物的設備はなく、酒類以外の仕入れは、ミカドに較べると著しく低額である。

白百合での酒類以外の仕入れは、果物、野菜、つまみ類であつて、その金額は仕入額の一割にもみたないのが実情である。

そこで総仕入金額の一割と計算すると金二九四、二一〇円であり、したがつて、総仕入額は金二、九四二、一〇一円である。

(二) 売上金額

被告は、A、B、Cなる同業の差益率と所得率とによつて推計しているが、白百合の店舗のある共同ビルには白百合、白鳥を含めて六軒のバーがあり、その規模もほぼ同じであるからこれらの店舗と比較することが相当である。

これらを参考にし、かつ、白百合の実情を考えると、売上金額中に占める仕入金額の割合は四六%であり、したがつて売上金額は金六、三九五、八七一円である。

(三) 一般経費

売上金額に対する一般経費の割合も同一建物内の他の店舗および白百合の実情を考えると、一二%であり、したがつて、金七六七、五〇四円である。

(四) 雇人費

雇人費は売上の三五%を下ることなく、三五%と計算すると金二、二三八、五五四円である。

(五) 減価償却費 金一八、六九二円

(六) 所得

経費合計は金五、九六六、八五一円であり、これを売上金額から差引いた所得金額は金四二九、〇二〇円である。

2  白鳥の昭和三八年の所得は次のとおりである。

(一) 仕入金額

中島屋からの仕入金額は、金一、五二七、七一六円である。

酒類以外の仕入れは、白百合について述べたところと同じであつて、総仕入額の一割金一六九、七四六円であり、したがつて、仕入総額は金一、六九七、四六二円である。

(二) 売上金額

白百合と同じく売上金額中に占める仕入金額の割合は四六%であり、売上金額は金三、六九〇、一三六円である。

(三) 一般経費

白百合と同じく売上金額の一二%であり金四四二、八一六円である。

(四) 雇人費

白百合と同じく売上金額の三五%で、金一、二九一、五四七円である。

(五) 地代・家賃

昭和三九年分についても既に述べたとおり二〇四、〇〇〇円となる。

(六) 所得

経費の合計は金三、六三五、八二五円であり、これを売上金額から差引いた所得金額は金五四、三一一円である。

第六、証拠

一、原告

1  甲第一ないし第一四号証を提出。

2  証人河野末治(第一回)同栗山はまの、同後藤和子の各証言、原告本人尋問の結果を援用。

3  乙第五号証の原本の存在および成立を認める。同第七、八号証、同第一一号証の一、二、同第一二号証の一ないし三、同第一三号証、同第一四号証の一ないし三、同第一五号証の一ないし九、同第一六号証の一、二、同第一七号証の一、二、同第一八、一九号証の成立はいずれも認める。

その余りの乙号各証の成立は不知。

二、被告

1  乙第一号証、同第二号証の一ないし三、同第三号証、同第四号証の一、二、第五ないし第一〇号証、第一一号証の一、二、同第一二号証の一ないし三、同第一三号証、同第一四号証の一ないし三、同第一五号証の一ないし九、同第一六、一七号証の各一、二、同第一八ないし第二〇号証、同第二一号証の一、二、同第二二、二三号証、同第二四号証の一、二、同第二五号証の一ないし三を提出。

2  証人河野末治(第一、二回)、同栗山はまの、同鈴木茂の各証言を援用。

3  甲第五号証の成立は不知、その余の甲号各証の成立はいずれも認める。

理由

一、請求原因第一、二項は当事者間に争いないところ、原告は、昭和三八年ないし四〇年分の原告の事業取得金額は請求原因第一項の確定申告のとおりであり、右各年分の事業取得金額につき、右申告額を超えてなした被告の所得税更正決定および加算税賦課決定の各処分は違法であると主張する。

二、そこで右処分の違法性の有無を判断するに、被告は、原告の右各年分の事業所得は、原告が経営するキヤバレー「ヨコハマミカド」、以下単にキヤバレー「ミカド」という)、バー「白百合」「白鳥」「ゴルフ」の収益によるものであると主張し、原告は、バー「ゴルフ」は原告の経営ではなく、かつ、昭和三九年以降は営業しておらず、バー「白百合」「白鳥」の昭和三八年の経営者は原告ではないと主張し、所得の帰属を争うので検討する。(原告がキヤバレー「ミカド」、バー「白百合」「白鳥」を昭和三九、四〇年に経営し、その所得が原告に帰属することは当事者間に争がない。)

(一)  成立に争いのない甲第四号証、乙第一五号証の一ないし九、証人河野末治の証言(第一回)によつて成立の認められる同第四号証の二、証人鈴木茂の証言によつて成立の認められる同第六号証、同第九号証、証人鈴木茂、同河野末治(第一回)の各証言によれば、バー「ゴルフ」は訴外山下兵意名義で昭和三八年一月二八日食品衛生法上の営業許可を受け、昭和三九年二月一〇日同訴外人名義で廃業届が神奈川保健所に提出されており、昭和三七年一二月から昭和三八年三月までの同店の料飲税は同訴外人名義で納入されていることが認められるが、他方右各証 によれば同年四月以降昭和三九年二月までの料飲税は原告または訴外後藤康子名義で納入されていること、同店は酒類を訴外中島酒店より仕入れているのであるが、昭和三八年六月から昭和三九年一月までの中島酒店に対する支払いは、東京相互銀行横浜駅前支店の原告名義の当座預金から原告が振出した小切手によつてなされていること、バー「ゴルフ」は昭和四〇年一〇月に再開され、同月以降の右中島酒店に対する仕入れ代金は原告によつて支払われていること、原告の本件審査請求に関与した訴外税理士斉藤武雄は原告の依頼によりバー「ゴルフ」の所得計算をしたものであることをいずれも認めることができ、以上によれば、バー「ゴルフ」は昭和三八、三九、四〇年のいずれの年も営業しており、その実質的な経営者は訴外山下兵意ではなく原告であり、従つてその所得は原告に帰属するといわねばならない。

(二)  前記乙第九号証、同第一五号証の一、二、原本の存在および成立に争いのない同五号証、成立に争いのない同一一号証の一、二同第一二号証の一ないし三、同第一三号証、同第一四号証の一ないし三、同第一六号証の一、二、前記鈴木証言によつて成立の認められる同第一〇号証、同第二五号証の一、二、前記鈴木証言、証人栗山はまのの証言、原告本人尋問の結果、(後記措信しない部分を除く)によれば、バー「白百合」は昭和三四年一二月ごろ、バー「白鳥」は昭和三六年五月ころに開業しいずれも開業以来昭和三九年三月ころまで訴外後藤康子が右店舗の責任者としてして売上を持帰つていたのであるが、右後藤康子はバー「白百合」が開業したころから原告と同居して事実上の夫婦関係にある間柄であること、昭和三八年のバー「白百合」「白鳥」の料飲税はいずれも同年四月分を除いて、原告または原告の旧姓である高橋忠市名義で納入されていること、昭和三八年におけるバー「白百合」「白鳥」の前記中島酒店からの仕入代金および「白百合」の訴外木下商店からの酒類仕入代金は、バー「ゴルフ」の場合と同じく原告振出しの小切手によつて支払われていること、昭和三八年六月および一〇月のバー「白百合」の電話料金も原告振出しの小切手によつて支払われていること、訴外清水建設株式会社がバー「白百合」に支払つた昭和三八年七月ないし九月の飲食代金は前記東京相互銀行の原告名義の当座預金に入金されていること、訴外後藤康子はバー「白百合」「白鳥」の経営者であたことはないと述べていること、バー「白百合」「白鳥」の経理に関与したことのある訴外税理士栗山はまの、同斉藤武雄は、原告の依頼によつて右所得計算をすることになつたものであることがいずれも認められ、以上によれば、昭和三八年におけるバー「白百合」「白鳥」の経営者は訴外後藤康子ではなく原告であり、その所得は原告に帰属しているといわねばならない。

(三)  原告本人尋問の結果中、バー「ゴルフ」の経営者は訴外山下兵意であり、バー「白百合」「白鳥」の昭和三八年における経営者は訴外後藤康子である旨の供述部分はいずれも、前掲各証拠に照らして借信できず、そのほかに前記認定を覆えすに足りる証拠はない。

三、被告は原告の事業所得につき、被告主張の方法によりいずれも推計しているのであるが、前記乙第九号証、成立に争いのない同第七号証、証人河野末治の証言(第二回)によつて成立の認められる同第二一号証の二、前記栗山、河野(第一回)証言、原告本人尋問の結果によれば、訴外税務調査官河野末治は外二名の調査官とともに、昭和四一年三月末ころ、原告の昭和三八年ないし四〇年分の所得調査のためにキヤバレー「ミカド」に赴き、原告に対して、右「ミカド」、バー「白百合」「白鳥」「ゴルフ」の所得の概況を質問し、右各店舗の帳簿書類等を提示するよう要請したが、原告は右調査に非協力的であつて事前に右帳簿書類等を隠匿しており、右調査官らは、キヤバレー「ミカド」の昭和四〇年五月以降のホステス指名料台帳、右「ミカド」および、バー「ゴルフ」の同年一一月以降の売掛台帳を借用できたのみであつたこと、右河野調査官はその後も原告の経理顧問であつた前記栗山税理士を通じて原告に帳簿書類を提出するよう説得を続け、その結果原告は昭和四〇年一一月以降のキヤバレー「ミカド」、バー「白百合」「白鳥」「ゴルフ」の収支明細ノート、右「ミカド」の同年一月ないし三月および八月ないし一二月の現現出納ノート、同じく同年七月以降の試算表およびホステス給与支払明細表、同じく一月ないし三月の入出金伝票等を前記調査官に提出したこと、原告提出にかかる右帳簿書類は正規の簿記の原則によつて記載されたものではなく、しかも欠落部分があり、帳簿の裏付となる伝票、領収書等の原始記録は完備されていなかつたこと、バー三店および昭和三九年分のキヤバレー「ミカド」の帳簿書類は殆んど記載されておらず、原始記録も殆んど保存されていないことがいずれも認められ、以上のように帳簿書類、原始記録が殆んど存在せずまたは存在していても極めて内容が不完全であり、かつ納品書において税務調査に非協力的な場合に税務署長が更正決定をするに当つて所得を推計することは、推計方法が合理的である限り所得税法第一五六号(旧所得税法第四五条第三項)によつて許されるといわなければならない。

四、そこでまずキヤバレー「ミカド」について、所得計算の推計方法が合理的か否かについて検討する。

(一)  昭和四〇年分

1  売上金額

前記乙第四号証の二、同第二一号証の二、前記河野証言(第一、二回)によれば、被告は原告提出にかかる現金出納ノート、伝票、来客集計表により昭和四〇年の各月の売上を把握し、現金売上、掛売上、前売券売上、接待売上を通じて比較的よく記載されている一、二月九ないし一二月の総売上金額を算出し(但し一月の掛売上は欠帳があるので、一日当りの平均掛売上金額に営業日数二九日を乗じて算出)、これより前売券売上を除いた売上を右期間の消費本数(但し、前記鈴木証言によつて成立の認められる乙第二二、二三号証によれば、ビールの破損率は通常〇・二パーセントであり、パーテイー券売上枚数のうち、その二〇パーセントは通常来店しないことが認められるのでビール仕入本数から破損分およびパーテイ券売上枚数-券一枚につきビール一本がつく-の八〇パーセントを控除したもの)で除して、ビール一本当りの金額を算出し、これにビール仕入先である前記中島酒店に対する反面調査によつて把握した年間ビール仕入本数(但し、破損分の〇・二パーセントを控除したものを乗じたうえ、年間の前売券売上金額を加算して年間総売上金額を算出したことが認められる。(その計算式は被告主張一の一覧表1のとおりである。)

以上のように被告は反面調査によつて完全に把握されたビール仕入本数に着目し、売上金額がほぼ完全に把握できる月のビール一本当りの売上金額を算出し、これによつて年間売上金額を推計したのであるが、キヤバレーのようにビールの売上を主体とする飲食業においては、その仕入と売上は相関関係にあることを考えれば、右推計方法は合理的であるということができる。

ところで、成立に争いのない甲第四号証および前記河野証言(第一回)によれば、被告はビール仕入本数を前記中島酒店の売掛額(甲第七号証)によつてのみ算出されることが認められるが、右帳簿によれば昭和四〇年一月のビール仕入本数は五、〇四〇本ではなく、四、八一二本であり、右仕入本数を訂正して計算するとビール一本当りの売上金額は金九〇七円四〇銭であり、昭和四〇年におけるキヤバレー「ミカド」の年間総売上金額は金八九、四一四、三七六円である。(別紙計算表(1)(2)のとおり)

2  仕入金額

前記甲第七号証、乙第四号証の二、成立に争いのない同第八号証、前記河野証言(第一回)によれば、前記中島酒店の売掛帳(甲第七号証)により同店からの酒類仕入金額を把握し、これと原告提出の集計表(乙第八号証)を基礎に被告主張一の一覧表2の方法により年間仕入金額を算出したことが認められ、右算出方法が合理的であることは原告もこれを認めるところである。

ところで前記認定によれば、昭和四〇年一月における中島酒店からのビール仕入本数は四、八一二本であり、そうすると中島酒店からの年間仕入金額は金一一、三〇八、一九二円であり、年間仕入総額は金一八、一八九、九一九円である。

(別紙計算表(3)のとおり)

3  差引利益

1の売上金額から2の仕入金額を控除した金七一、二二四、四五七円である。

4  公租公課

公租公課についての内訳は被告主張一の一覧表4のとおりであるが、原告は自動車税の算定を除いてはその数額を争わないので、自動車税の算定について検討する。

昭和四〇年分の自動車税が金一六、〇〇〇円であることは当事者間に争いないところ、前記河野証言(第二回)によれば、被告はキヤバレーのような業種では、仕入の場合は仕入先が配達し、売掛金の集金も各ホステスの責任で行うことが常態であることから、家事関連費用として税額の二分の一を経費として計上したことが認められるが、具体的にキヤバレー「ミカド」について、自動車が営業以外の目的で使用されていたか否かを調査してはいないのであり、他方原告本人尋問の結果によれば、原告およびその家族は運転免許証を持つていないし、かつ、運転手も雇つてはおらず、キヤバレー「ミカド」の仕入および集金のために自動車を使用していたことが認められるのであり、前記のような場合に一般的傾向のみによつて自動車税の二分の一を家事関連費用として控除した被告の認定は合理的であるということはできない。

よつて、自動車税額全額を経費と認むべきであり、公租公課は金二、二七八、一七九円である。

5  水道光熱費

水道光熱費についての被告の主張は被告主張一の一覧表5記載のとおりであり、右金額は原告の認めるところである。

6  燃料費

自動車燃料費についての被告の主張は被告主張一の一覧表6記載のとおりであり、自動車燃料費が金三二五、一四四円であることは当事者間に争いないところ、前記のとおり、自動車は営業専用と認むべきであるから、燃料費は全額経費として計上すべきであり、その二分の一を家事関連費用として控除した被告の計算は合理的ではないといわなければならない。

7  旅費通信費、広告料

旅費通信費および広告料についての被告の主張はそれぞれ被告主張一の一覧表7、8記載のとおりであり、右金額は原告の認めるところである。

8  接待交際費

接待交際費についての被告の主張は、被告主張一の一覧表9のとおりである。

前記乙第八号証によれば、原向提出にかかる試算表には交際費の月別金額が記載されていることが認められるが、前記河野証言(第二回)によれば右記載金額には原始記録の裏付けがなく、記載通りには信用できなかつたので、被告は現金出納ノートによつて判明している昭和四〇年一、二月、九ないし一二月の接待費売上の合計額を右期間のビール仕入本数で除してビール一本当りの右売上額を算出し、これに年間のビール仕入本数を乗じて接待費売上を推計したものであることが認められ、以上のように原始記録の不備により交際費の実額を把握できない場合に右の如き推計をすることは合理的であるといわなければならない。

原告本人尋問の結果によれば、キヤバレー「ミカド」では店舗内接待のほかに店舗外接待をしていたことが認められるが、前者の方が多く、後者については裏付けとなる記録が完備していないのであるから、右尋問の結果をもつて前記推計方法が合理的でないということはできない。

ところで、前記の如く、昭和四〇年一月のビール仕入本数は四、八一二本であるから、右本数によつて接待交際費を算出すると金一、七四三、六二四円となる。(別紙計算表(4)のとおり)

9  保険料

保険料についての被告の主張は被告主張一の一覧表10のとおりであり、火災保険料については当事者間に争いないところ、前記のとおり、自動車は営業専用と認むべきであり、右自動車支払保険料金五六、三六〇円のうちその二分の一を家事関連費用として控除した被告の計算は合理的ではないといわなければならず、保険料合計は金八五、八六〇円である。

10  修繕費、消耗品費、福利厚生費、事務費

修繕費、消耗品費、福利厚生費、事務費についての被告の主張は、原告主張一の一覧表11ないし14のとおりであり、右金額は原告の認めるところである。

11  出演料

出演料についての被告の主張は被告主張一の一覧表15のとおりであるが、前記乙第二一号証の二および河野証言(第二回)によれば、被告は原告提出の領収書を検討し、領収書が提出されていない分についても、提出された領収書から支払いが合理的に推測されるものにつていはこれを補つて右出演料の額を計算したことが認められるのであり、右方法は合理的であるといわなければならない。

原告は本人尋問において被告の主張するもの以上に出演料を支払つていると供述するが、これを裏付ける証拠はなく、右供述部分はにわかに措信できない。

12  雑費

雑費についての被告の主張は被告主張一の一覧表16記載のとおりであり、右金額は原告の認めるところである。

13  減価償却費

減価償却費についての被告の主張は被告主張一の一覧表17のとおりであり、前記河野証言によれば、被告は前記栗山税理士が調査した取得価格を基礎として右減価償却の額を計算したものであることが認められ、右は合理的であるといわなければならない。

原告は減価償却の対象品目および取得価格を争い、償却費総額は被告の主張を上まわると主張するが、これを裏付ける証拠はない。

ところで、右償却費のうち、自動車は前記のとおり、営業専用と認むべきであるから、自自動車の償却費は金一七一、一八六円であり、償却費総額は金一、三八〇、〇五〇円である。

14  雑収入

雑収入についての被告の主張は被告主張一の一覧表20のとおりであり、原告は受取利息による収入を争い、その余は認めるので、右受取利息について検討するに、前記乙第二一号証の二および河野証言(第二回)によれば、被告は、原告提出にかかる現金出納ノートおよび伝票により雑収入を算出した結果受取利息金四〇、〇〇〇円を計上したことが認められ、右の方法は合理的であるといわなければならない。

15  雇人費

雇人費についての被告の主張は被告主張一の一覧表22のとおりであり、原告は右のうちホステス給料の算出方法を争うので検討する。

前記乙第四号証の二および河野証言によれば、被告は原告提出にかかる昭和四〇年七月ないし一二月のホステス給与支払明細表と右期間のビール仕入本数を把握し、ビール一本当りの給与を算出し、これに年間ビール仕入本数を乗じて、年間のホステス給与支払額を推計したものであることが認められ、右推計方法は支払給与の実額が把握できない場合には合理的であるといわなければならない。

原告は右推計方法につき、原告主張の売上額との対比で算出すべきであると主張するが、被告の推計方法に比較して、原告のそれが合理的であるということはできない。

ところで、前記のとおり、年間のビール仕入本数は九七、〇三八本であるから、これによつて計算するとホステス給与支払額は金三四、四〇五、五三三円であり、雇人費合計は金四二、三二六、二四八円である。(別紙計算表(5)のとおり)

16  地代・家賃、利子、従業員賄費、顧問料

地代・家賃、利子、従業員賄費、顧問料についての被告の主張は被告主張一の一覧表23ないし26記載のとおりであり、原告は右金額を認めている。

17  以上によつて原告の所得金額を計算すると金二、八〇〇、七三五円である。

(二)  昭和三九年分

1  売上金額

売上金額についての被告の推計方法は被告主張二の一覧表1のとおりであるところ前記三で認定した如く、キヤバレー「ミカド」の三九年の営業関係の原始記録は保存されておらず、正確な売上金額を把握することは不可能であるから、昭和四〇年分の所得計算で算定したビール一本当りの売上高を基礎として、これに反面調査によつて把握した年間のビール仕入本数(但し、中ビンおよびスタイニーは価格によつて大ビンに換算、破損分、開店祝い分は控除)を乗じて年間売上総額を算出した被告の推計方法は合理的であるといわなければならない。

原告は右推計方法の合理性を争い、現金出納帳の記載には信用性があるので、これを基礎として売上金額を推計すべきであると主張するが、右主張を裏付ける証拠はない。

ところで、成立に争いのない甲第六号証および原告本人尋問の結果によれば、キヤバレー「ミカド」は昭和三九年三月六日に開店したのであるが、その前日に披露パーテイーが開催され、ビール四〇四本が消費されていることが認められ、売上金額の計算においてはこれを控除すべきである。

なお、昭和四〇年分の所得計算によれば、ビール一本当りの売上金額は金九〇七、四〇銭であることは前記のとおりである。

ビール仕入本数および単価が被告主張のとおりであることは、前記乙第四号証の二によつて認められる。

これによつて、昭和三九年の売上金額を算出すると、金七〇、四一〇、六一〇円である。(別紙計算表(6)のとおり)

2  原価、一般経費額

原価、一般経費額についての被告の推計方法は、被告主張二の一覧表2のとおりであるところ、前記の如く、昭和三九年の原価および一般経費は前記中島酒店からの酒類仕入金額を除いては実額を把握できないのであるから、昭和四〇年分のキヤバレー「ミカド」の原価経費率に同三九年分の売上金額を乗じて算出した推計方法は合理的であるといわなければならない。

ところで昭和四〇年分の仕入額は金一八、一八九、九一九円、一般経費は金二〇、三八六、七六四円(但し、事業税金三五、〇〇〇円は除外)、売上金額は金八九、四一四、三七六円であるから、右によつて計算すると昭和三九年の原価、一般経費金額は金三〇、三七七、七五二円である。(別紙計算表(7)のとおり)

3  雇人費

雇人費についての被告の推計方法は被告主張二の一覧表3のとおりであるところ、雇人費についてもその実額を把握することはできないのであるから、売上金額(但し、開店祝いに使用したビール代金を加算)に昭和四〇年分の雇人比率を乗じて、雇人費を算出した推計方法は合理的であるといわなければならない。

ところで前記売上金額は金七〇、四一〇、六一〇円、開店祝いに使用したビールは四〇四本であり、昭和四〇年分の雇人費率は四七・三三パーセントであるから、これによつて計算すると右雇人費は金三三、四九八、八四八円である。(別紙計算表(8)のとおり)

4  地代・家賃、利子、従業員賄費、顧問料

地代・家賃、利子、従業員賄費、顧問料についての被告の主張は被告主張二の一覧表5ないし8のとおりであり、右金額は原告の認めるところである。

5  以上によつて原告の所得金額を計算すると金二、二七九、九一八円である。

五、次にバー「白百合白、「白鳥」、「ゴルフ」について、所得金額の推計方法が合理的か否かについて検討する。

バー「白百合」、「白鳥」、「ゴルフ」の昭和三八年ないし四〇年分の所得計算についての推計方法は被告主張三の一覧表のとおりである。

成立に争いのない甲第八ないし第一三号証、前記鈴木証言によつて成立の認められる乙第一号証、同第二号証の一ないし三、前記同第四号証の二、同第五号証、前記河野証言(第一、二回)、鈴木証言によれば、被告は、バー「白百合」「白鳥」「ゴルフ」の昭和三八年ないし四〇年の営業関係の原始記録、帳簿類が殆んど提出されず、反面調査によつて酒類の仕入金額が判明したのみであつたので、昭和四〇年のキヤバレー「ミカド」の総仕入金額に対する酒類仕入金額の比率によつて、総仕入金額を算出し、さらに神奈川税務署管内で継続的にバーを営む業者で、事業規模が本件のバー三店に類似するものについて、差益率、所得率、雇人費率を調査し、これによつてバー三店の各年分の売上金額、算出所得額、雇人費を算出して、各所得金額を推計したことが認められる。

前記河野証言(第二回)によれば、被告が、酒類仕入金額から売上金額を推計するにつき、昭和四〇年のキヤバレー「ミカド」における比率を基準としたのは、前記バー三店が比較的高級で料金がいわゆるセツト制であり、ボツクス数も多いことから、キヤバレー「ミカド」と営業形態が似ていると推測した結果であるが、他の同規模のバーにおける右比率については調査しておらず、他方原告本人尋問の結果によれば、キヤバレー「ミカド」は専任のコツク二名を置いており、他のキヤバレーと比較しても、料理の種類を多くして売上げを高くしようとしていたことが認められるのであり、右両者の酒類以外の仕入金額が同程度であると推測することは合理的ではなく、本件バーにおける総仕入金額に対する酒類仕入額の比率は右尋問の結果によつて、一〇パーセントとするのが相当である。

次に、被告が、本件バーの所得計算につき、いわゆる同業者比率によつて推計したことの合理性につき検討するに、前記のように仕入金額の一部しか判明していない場合に同業者比率により所得金額を推計するのは、原告において具体的な反証がない限り、一応合理的と言わざるを得ない。

前記乙第一号証、第二号証の一ないし三によれば、昭和三八年ないし四〇年における同業者比率はいずれも被告主張のとおりであると認められるところ、原告は右比率を争い、売上金額に対する仕入金額の場合は四六パーセント、経費率は一二パーセント、雇人費率は三五パーセントが相当であると主張するが、右比率が相当であると認めるに足る証拠はない。

以上の前提でバー「白百合」「白鳥」「ゴルフ」の各年分別の所得計算について検討する。

(一)  昭和四〇年分

A  バー「白百合」

1 仕入金額

前記乙第四号証の二によれば、バー「白百合」の昭和四〇年分の酒類仕入金額は金一、七一八、〇九三円であるから、総仕入金額は金一、九〇八、九九二円である。(別紙計算表(9)のとおり)

2 売上金額

売上金額は前記同業者比率の差益率六四・八七パーセントを適用して算出した金五、四三四、〇七九円である(別紙計算表(10)のとおり)

3 算出所得額

算出所得額は右売上金額に前記所得率五三・〇六パーセントを乗じて算出した金二、八八三、三二二円である。

4 雇人費

雇人費は右売上金額に前記雇人費率三一パーセントを乗じて算出した金一、六八四、五六四円である。

5 原価償却費

原価償却費が金一八、六九二円であることは原告の認めるところである。

6 所得金額

以上によつて所得金額を算出すると金一、一八〇、〇六六円である。

B  バー「白鳥」

1 仕入金額

前記乙第四号証の二によれば、昭和四〇年分のバー「白鳥」の酒類仕入金額は金二、五二三、九七五円であるから、総仕入金額は金二、八〇四、四一六円である。(別紙計算表(11)のとおり)

2 売上金額

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金七、九八二、九六六円である。(別紙計算表(12)のとおり)

3 算出所得額

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金四、二三五、七六一円である。

4 雇人費

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金二、四七四、七一九円である。

5 減価償却費

原告本人尋問の結果によれば、バー「白鳥」と「白百合」の店舗は一括して購入したものであることが認められ、前記のとおりバー「白百合」の原価償却費については当事者間に争いがないから、「白鳥」の原価償却費も右と同額の金一八、六九二円とするのが相当である。

ところで、原告はバー「白鳥」の店舗は訴外後藤モトが買受けることになつており、店の代金の割賦金を原告において支払つていたので、金二〇四、〇〇〇円を地代・家賃として控除すべきであると主張するが、成立に争いのない甲第一四号証および証人後藤和子の証言によれば、右店舗の所有物を代物弁済として訴外後藤モトまたは同和子に移転するという話は昭和三八年ころから右両者の間で交されたものの、これが確定的になつたのは右所有権移転登記のなされた昭和四二年三月の直前であつたことが認められ、昭和四〇年以前においては右所有権は原告が有していたというべきであり、原告の支払つた割賦金を地代家賃と認めることはできない。

6 所得金額

以上によつて所得金額を算出すると金一、七四二、三五〇円である。

C  バー「ゴルフ」

1 仕入金額

前記乙第四号証の2によれば、昭和四〇年分の酒類仕入額は金四二六、六二八円であるから総仕入金額は金四七四、〇三一円である。(別紙計算表(13)のとおり)

2 売上金額

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金一、三四九、三六二円である。(別紙計算表(14)のとおり)

3 算出所得額

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金七一五、九七一円である。

4 雇人費

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金四一八、三〇二円である。

5 地代・家賃

弁論の全趣旨によつて地代・家賃は金三三六、〇〇〇円であることが認められる。

6 減価償却費

弁論の全趣旨によつて金一九、〇一〇円であることが認められる。

7 所得金額

以上によつて所得金額を算出すると金五七、三四一円の赤字となる。

(二)  昭和三九年分

A  バー「白百合」

1 仕入金額

前記乙第四号証の二によれば、酒類仕入金額は金二、三三七、八六三円であるから総仕入金額は金二、五九七、六三五円である。(別紙計算表(15)のとおり)

2 売上金額

売上金額は前記同業者比率の差益率六〇・六五パーセントを適用して算出すると金六、六〇一、三三四円である。(別紙計算表(16)のとおり)

3 算出所得額

算出所得額は右売上金額に所得率四九・八九パーセントを乗じて算出した金三、二九三、四〇五円である。

4 雇人費

雇人費は右売上金額に雇人費率二六・二一パーセントを乗じて算出した金一、七二四、二六八円である。

5 減価償却費

減価償却費は昭和四〇年と同様であるので金一八、六九二円である。

6 所得金額

以上によつて所得金額を算出すると金一、五五〇、四四五円である。

B  バー「白鳥」

1 仕入金額

前記乙第四号証の二によれば、酒類仕入金額は金二、二七五、三四一円であるから、総仕入金額は金二、五二八、一五六円である。(別紙計算表(17)のとおり)

2 売上金額

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金六、四二四、七九二円である。(別紙計算表(18)のとおり)

3 算出所得額

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金三、二〇五、三二八円である。

4 雇人費

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金一、六七八、一五五円である。

5 減価償却費

昭和四〇年と同様であるから金一八、六九二円である。

6 所得金額

以上によつて所得金額を算出すると金一、五〇八、四八一円である。

C  バー「ゴルフ」

1 仕入金額

前記乙第六号証によれば酒類仕入金額は金三五二、四〇四円であるから、総仕入金額は金三九一、五六〇円である。(別紙計算表(19)のとおり)

2 売上金額

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金九九五、〇六九円である。(別紙計算表(20)のとおり)

3 算定所得額

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金四九六、四三九円である。

4 雇人費

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金二五九、九一二円である。

5 地代・家賃

弁論の全趣旨によれば、地代・家賃は金一三九、二〇〇円であることが認められる。

6 所得金額

以上によつて所得金額を算出すると金九七、三二七円である。

(三)  昭和三八年分

A  バー「白百合」

1 仕入金額

前記乙第四号証の二、同第五号証によれば、酒類仕入金額は前記中島酒店の分が金九五二、二二〇円、同木下商店の分が金一、六六七、八四九円であるから、総仕入金額は金二、九一一、一八七円である。(別紙計算表(21)のとおり)

2 売上金額

売上金額は前記同業者比率の差益率六〇・三七パーセントを適用して算出すると金七、三四五、九一七円である。(別紙計算表(22)のとおり)

3 算出所得額

算出所得額は右売上金額に所得率四八・五〇パーセントを乗じて算出した金三、五六二、七六九円である。

4 雇人費

雇人費は右売上金額に雇人費率二七・一四パーセントを乗じて算出した金一、九九三、六八一円である。

5 減価償却費

減価償却費は昭和四〇年と同様であるから金一八、六九二円である。

6 地代・家賃

弁論の全趣旨によつて、地代・家賃は金八〇、〇〇〇円と認めることができる。

7 顧問料

弁論の趣旨によつて顧問料は金五〇、〇〇〇円と認めることができる。

8 所得金額

以上によつて所得金額を算定すると金一、四二〇、三九六円である。

C  バー「白鳥」

1 仕入金額

前記乙第四号証の二によれば、酒類仕入金額は金一、五一八、八四五円であるから、総仕入金額は金一、六八七、六〇五円である。(別紙計算表(23)のとおり)

2 売上金額

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金四、二五八、四〇二円である。(別紙計算表(24)のとおり)

3 算出所得額

バー「白百合」と同様の方法で算出すると金二、〇六五、三二四円である。

4 雇人費

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金一、一五五、七三〇円である。

5 減価償却費

昭和四〇年と同様であるから金一八、六九二円である。

6 所得金額

以上によつて所得金額を算出すると金八九〇、九〇二円である。

C  バー「ゴルフ」

1 仕入金額

前記乙第五号証によれば、酒類仕入金額は金二、三五八、八四五円であるから、総仕入金額は金二、六二〇、九三八円である。(別紙計算表(25)のとおり)

2 売上金額

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金六、六一三、五二〇円である。(別紙計算表(26)のとおり)

3 算出所得額

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金三、二〇七、五五七円である。

4 雇人費

バー「白百合」と同様の方法によつて算出すると金一、七九四、九〇九円である。

5 地代・家賃

弁論の趣旨によれば地代・家賃は金五五六、八〇〇円であることが認められる。

6 所得金額

以上によつて所得金額を算出すると金八五五、八四八円である。

六、以上により原告の各年分別の事業所得金額を算出すると昭和四〇年分が金五、六六五、八一〇円、同三九年分が金五、四三六、一七一円、同三八年分が金三、一六七、一四六円となり、前記更正決定額のうち、昭和三八年分は右認定額を超えていないが、同三九、四〇年分についてはいずれも右認定額を超えている。

ところで、原告の昭和三九年、四〇年分の事業所得額は、昭和四三年八月二日東京国税局長のなした審査裁決により、それぞれ金五、四六〇、一五一円、金五、三一九、七九四円に減額されたことは当事者間に争いないから、昭和四〇年分については前記認定額を下まわることとなり、結局昭和三九年分につき、金五、四三六、一七一円を超えてなされた被告の更正決定および加算税賦課決定のみが違法ということになる。

なお、前記三で認定した如く、原告が税額計算の基礎となる事実を仮装または隠蔽し、これに基づいて納税申告書を提出していたことは明らかであるから、被告が国税通則法第六八条により重加算税を賦課決定をしたのは適法である。

七、以上の次第で、原告の本訴請求は、被告のなした昭和三九年分所得然更正決定および加算税賦加決定につき、事業所得金額金五、四三六、一七一円を超えてなした部分の取消を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担については、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第九二条但書を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 山田忠治 裁判長裁判官柏木賢吉、裁判官仲家暢彦は転任のため署名押印することができない。裁判官 山田忠治)

計算表

<省略>

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